ちょっとしたおでかけでも、車のトランクにDE01を積んでおくのにハマっています。家族が公園やカフェで休憩してる間に、ちょっぴりひとり時間を楽しむぐらいが、今の私にちょうどいい。
今回の舞台は、浜松市天竜区の二俣地区。浜松市中心部から北へ25kmのところにあります。
ここ、二俣地区では、広さ7km^2ほどの面積におよそ2,400世帯が暮らしています。2つの川が合流する地点なので「二俣」との名前がついたそうです。
家族で出かけた帰り道、二俣エリアで車を降り、ひとり時間を楽しんでみることにしました。15時から日が暮れるまでの、およそ2時間のポタリングを振り返ります。
コース概要
たまたま訪れた二俣地区を行き当たりばったりでポタリング。気になったお店を覗きながら楽しみました。
総走行距離:およそ1.1 km
所要時間:2時間ほど(休憩含む)
高低差:+7m / -7m
パンとコーヒーで腹ごしらえ
二俣でポタリングすると決めたのは、おすすめしてもらった「かもめの珈琲屋さん」に行くためだ。
二俣小学校東の交差点で、お店を発見した。白いけれど有機的な壁と、使い込まれた色の板がとても素敵。なぜだかホッとする色の組み合わせだ。
お店の中にもホッとする空間が広がっている予感を抱えて、白いのれんをくぐった。
かもめの淹れる珈琲のお店へ
お店の正式な名前は「山と川の喫茶室&焙煎室」。2020年頃から各地で出展していたかもめの珈琲屋さんが、2024年の春に構えた店舗だ。
注文前に、机に並べられたコーヒー豆とドリップパックをチェックした。全部で4種類くらい。どれもイイ香り。店主さんに説明してもらい、鮮やかな香りが気になったブラジル(正式なメニュー名はブラジル ブルボンアマレロ アナエロビック ボンジャルディン農園)をアイスで注文した。
数分後、ドリップしたてのコーヒーを飲んでみるとびっくりするほど美味しくて、思わず目が丸くなった。スッキリした味なのに、嫌な酸味は全くなくて、香りも豊かだ。舌の上から香りが広がっていく。幸せだ。
ブラジルのコーヒーというと、数年前、祖父母と銀座で飲んだ味を思い出す。
90歳手前の祖父母に銀座を案内してもらったときのこと。祖父はスマートフォンはおろか地図も見ずに、シャキシャキ歩いて次々にお店に連れて行ってくれた。
若いとき、営業の仕事で何度も訪れたは、今でもお手のものだそうだ。
「銀ブラですね」と言うと、「銀ブラの語源は、ブラブラ歩くことじゃなくて、銀座にある『カフェーパウリスタ』でブラジルのコーヒーを飲むこと」と教えてくれた。
そして、せっかくなので今でも残るカフェーパウリスタで、ブラジルを頼んだ。
あの頃は、コーヒーに砂糖とミルクをたっぷり加えないと飲めなかった。
ブラックのまま美味しく飲めるようになったと、電話しようかな。
パン屋「paisible」にもお立ち寄り
コーヒーを飲みながら二俣の地図を見て、かもめの珈琲屋さんのある広い通りが栄えていそうだとあたりをつけた。今日はこの通りを中心に回ってみよう。
DE01を漕ぎ始めてわずか5秒。おしゃれで可愛いパン屋「paisible」を見つけ、自転車から降りることにした。
店内はぬくもりと可愛さが溢れていて、なんとなく北欧っぽい。スタッフさんがニコニコと気さくに話しかけてくれて、とても感じが良い。
閉店直前だったので、サンドイッチはすでに売り切れ。人気NO.1と書かれていたあんパンと、レジ側にあったラスクを買うことにした。
2階にイートインスペースもちょっと見学。お子さん用の絵本もあり、家族でゆったり過ごせそうだ。温め直し用のトースターもある。こんなパン屋さんに通えたら、どんなにか日常が輝くだろう……。
もう少しここで過ごしたいけれど、時間がないので今日はがまん。焼きたての時間に合わせてまた来よう。
豆腐屋の音に誘われて
二俣エリアには、昔ながらの建物も多く残っている。風情のあるお店や家を見ながら走っていると、テレビで聞いたことのあるラッパの音が聞こえてきた。
まさかと思って音の方向に向かうと、豆腐屋さんがいた。
豆腐の移動販売に初遭遇
駐車場に停まっていたのは、移動販売の豆腐屋さん。
常連らしいご婦人と店員さんがにこやかに話している。急に令和から昭和にタイムスリップしたみたいだ。
このお店は文久2年から続く「染野屋」。茨城県に本社があるそうだ。定期的に移動販売に来ているらしい。
常連さんと店員さんから、おすすめの商品を教わった。2人とも話し上手で、ついついどれも食べたくなってしまう。
人気のゆば寄せ豆腐と豆乳パウンドケーキに、新発売のクリームコロッケを購入してリュックに詰め込んだ。
話している間にも「懐かしいわね」と足を止める方がいた。独特なラッパの音、みんな気になるよね。
夢工房もくもく
リュックをパンパンにしたあと、「良ければうちも見ていって」と染野屋の常連さんがアートギャラリー「夢工房もくもく」を案内してくれた。
工房のなかに入ると、絵や彫刻、写真がずらり。このあたりに住む方々の作品らしい。
意外と、と言ったら失礼だろうけど、見事な作品が並んでいる。コンクールで賞を取った方の作品もあるそうだ。気に入った作品の写真を撮らせてもらった。
夢工房もくもくのご主人鈴木さんから、木を焦がして絵を描く「ウッドバーニング」でつくったキーホルダーをお土産にいただいた。はんだごてのような道具で板に絵を描くらしい。500円で体験できるらしく、かなり迷ったが、二俣散策を続けたかったので、今回は遠慮することにした。
二俣にゆかりのある偉人たち
地図を見るまで知らなかったけれど、二俣は教科書に出てくる偉人「本田宗一郎」と「徳川信康」にゆかりのある土地だった。不勉強を反省したので、勉強がてら立ち寄っておくことにした。
本田宗一郎ものづくり伝承館
夢工房もくもくから100m。「本田宗一郎ものづくり伝承館」に到着。着いたのは閉館10分前だった。ギリギリセーフ。
本田宗一郎は、かの有名なHonda(正式名称は「Honda Motor Co., Ltd.」)の創業者だ。
浜松が誇る偉人の1人。ここは、本田宗一郎の業績や人となり、ものづくり精神を伝える場所らしい。観覧料が無料なのも嬉しい。
本田宗一郎氏のものづくりの思想が分かる言葉たちが展示してあった。
「製品をみれば目からその人の思想が入る」
「アイデアは人間である すぐれたアイデアは すぐれた人間から生まれる」
「世間でいう悪い子に期待している」
……なんだかちょっと、耳が痛い。
名言のほかに、バイクが5台ほど展示されている。バイクのことは詳しくないので「仮面ライダーが乗ってそうだな」なんて思った。1966年の、リトルホンダP25が可愛い。
最後に駆け足でお土産コーナーも見た。HONDAのキーリングやブロック、ステッカーが並んでいる。HONDA製の車や自転車の鍵につけたらおしゃれだなと思ったものの、我が家の乗り物はダイハツとDaytonaだったことを思い出し、断念した。
清瀧寺
本田宗一郎ものづくり伝承館の向かいに、清瀧寺がある。
清水が湧き出ていていたことから、徳川家康によって清瀧寺と名付けられたそうだ。家康もこの滝を見たのだろうか。滝の先には小さな池があり、大きな鯉が泳いでいた。
清瀧寺では、徳川家康の長男、信康をまつっている。信康は、父である家康の命でわずか21歳で自害させられてしまったという。なぜ家康がそのような命令を出したかは明らかになっていないと聞く。気の毒に思い、長い階段の先にある、信康廟の入り口で手を合わせていく。
境内にはユーモラスな青い龍の像があった。その名も「願意龍」。説明書きを読んでみる。
「清瀧寺に於ては入口右側に枯れることのない清瀧に池を設け鯉を放し左側にはこの信康堂にて信康公を顕彰し龍に守護を託しています」
さっきの鯉にもちゃんと意味があったようだ。
願いを託し、お賽銭を龍の口の中に入れた。チリン……と澄んだ音が響いた。風鈴よりも軽くて長く残る、透き通る良い音だった。
二俣で出会った人のおはなし
そろそろ帰ろうかと自転車を走らせていたら、不思議な小さなプールと、近くで何かを洗っているおじさんを見かけた。
何をしているんだろう?声をかけてみたら、趣味で金魚を育て始めたのだと言う。
金魚のおじさん
「金魚のお世話は良い、冬は何もしなくて良いし、水遊びしたい季節になったらパシャパシャ遊べばいい」
おじさんのおどけた言い方が面白くて、ついつい笑ってしまう。
金魚を見せてもらうと、上品なひれで泳ぐ姿がとても美しかった。
水槽の上に顔を出しているとゆらゆら金魚が集まってきて、おじさんに懐いているのがよくわかった。餌だと勘違いさせて申し訳ない。優雅な金魚たちに小声で謝った。
小さい頃は運動も勉強も嫌いだったというおじさん。運動会なんて雨になりゃ良いと願い、合唱も口パクで通したかった話で意気投合した。意外なところに同志がいるものだ。
ご自宅の前を、NHK「こころ旅」で火野正平さんが通ったことがあるらしい。ちょっとだけ自慢げな様子にも、好感を覚えた。
自転車屋「HAPPY&SLAPPY」
随分と暗くなってしまった。DE01にはまだライトをつけていないので、夜は運転を控えている。DE01から降りて、クローバー通り商店街を歩いて進んだ。
別行動していた家族から、集合場所の「森のマルシェきころ」の横に、オシャレな自転車屋さんがあるとの情報を得た。ちょうどいい、ライトをつけてもらおう。
到着した自転車屋「Happy&Slappy」は、想像以上にオシャレな外観だった。店の外にも可愛くてかっこいい自転車が数台並んでいる。これは気になる。
店内をチラリと見たところ、何か食べようとしている店主さんと目が合った。やってしまった。気まずさに固まる私を、店主さんが笑顔で店内に招き入れてくれた。
Happy&Slappyは2017年に二俣にできたお店。店主の伊藤さんはご自身も相当な自転車好きだ。
店内には店主がパーツを組み合わせたという自転車が並んでいる。壁には有孔ボードに自転車関連製品が飾られている。そんな展示になんだかワクワクする。
どんなライトが必要か、今の悩みや用途を軽く説明し、ハンドルと後ろのタイヤの2箇所にそれぞれライトを見繕ってもらう。
DE01と相性が良さそうなリュックも見せてもらった。ブロンプトン向けの製品らしい。取り外してそのまま買い物に行けるところも使い勝手が良さそうだ。
店主の伊藤さんからは自転車愛が溢れている。自転車について話していると、どんどん目がキラキラしていくように見えた。街中ポタリングばかりしている私に、本格的なライドの魅力を語ってくれた。
山を一生懸命登ったあとのごはんがとても美味しいことや、店員さんのちょっとした対応に「そんなことしてもらってイイの?!」と思ってしまうほど、他人が優しく見えることなど。マガジンを読んでいる自転車好きの方なら、あるあると頷いてしまうことなのかもしれない。
自転車が好きな人と話していると、自転車には運動や移動にはとどまらない役割があると感じる。ちょっと行ってみようかな、と思えるエリアがどんどん広がるとともに、なんでもないと思っていた場所にも発見がある。
今回私が購入した希少なライトはもちろん、ハッピーアンドスラッピーではDE01のカスタマイズも対応してくれるそうだ。マガジンをお読みの他のオーナーさんもぜひ一度訪れてみては。
今回のお立ち寄りスポット
- かもめの珈琲屋さん「山と川の喫茶室&焙煎室」
※営業日や出店予告などの最新情報は公式Instagramをご確認ください。 - パン屋「paisible」
※営業日やイベントなどの最新情報は公式Instagramをご確認ください。 - 移動販売の豆腐屋「染野屋」
- アートギャラリー「夢工房もくもく」
- 本田宗一郎ものづくり伝承館
- 清瀧寺
- 自転車屋「HAPPY&SLAPPY」
※営業日などの最新情報は公式Instagramをご確認ください。
本原稿を書き終わった後に、火野正平さんが、
原稿の修正をしている間に、祖父 純一が亡くなった。
「今、いつもの自転車のブログを書いてるよ。一緒に銀ブラした時の思い出も書いたんだ」
と電話したのが、祖父との最後の会話となった。
おじいちゃん、いつもブログを楽しみにしてくれてありがとう。忘れません。
30年前の祖父と私