7回目の温ポタは、金沢にある「湯涌温泉」の総湯を目指します。目的地の湯涌温泉は、開湯およそ1300年の歴史を持つ金沢屈指の名湯。藩政時代には前田家の湯治場としても知られ、「金沢の奥座敷」と呼ばれる落ち着いた温泉街です。総湯「白鷺の湯(しらさぎのゆ)」は、地元の人々にも愛される共同浴場。源泉かけ流しの柔らかいお湯がじんわりと体を包み、木の香りがほんのり漂う浴場内は、まさに“山あいの癒し処”です。
今回のスポットはこちら↓↓









湯涌温泉コースマップ↓↓

今回も内容盛りだくさんの温ポタになりました!走ったコースはおよそ40km。アップダウンはやや多めでしたが、そのぶん山里の空気や田園風景が最高で、ついつい「これなら許せちゃうな〜」と思えるコースでした。
それでは「ぶっち〜の温ポタ」スタートで〜す!!
金沢駅前からのスタート〜微妙な予報で午前中勝負〜
金沢駅前は朝から観光客でにぎわい、スーツケースを引く外国人ツーリストの姿も多く見かけ、改めて「金沢って人気あるんだなぁ」と。ちなみに今日の天気予報は昼過ぎから雨が降るかもしれないという微妙な空模様。「午前中勝負だな」と気を引き締めて、少し早めのスタートを切ることに。

せっかく早いスタートなので、今日は金沢でちょっと贅沢なモーニングを楽しもう。街の朝の空気を感じながら、DE01をゆっくり走らせてお店へ向かいます。
たまには“ちょっと贅沢な朝”を〜isotope(アイソトープ)〜
アイソトープに到着。雑誌やSNSでも“金沢で朝ごはんを食べるならここ!”と紹介されることが多い人気カフェ。開放的なガラス張りの外観と、洗練されたインテリアが印象的。


8時30分ごろに到着したけれど、すでに店内はたくさんの人でにぎわってる。地元の人だけでなく、外国人の姿もちらほら。朝から多国籍な空気が流れていて、金沢の“ちょっと都会な朝”を感じられる。

2Fもあるということで、そちらでいただくことに。町家をおしゃれにリノベーションした空間は、木の温もりに包まれつつもモダンで洗練された雰囲気。壁にはドライフラワーがセンスよく飾られ、朝の光がやわらかく差し込んでいました。
かわいいキューブと、やさしい音楽〜isotopeで味わうプチ贅沢モーニング〜
待ち札は、サイコロのようなかわいいキューブ。順番を待ちながら耳をすませると、まるで海外のカフェにいるよう。流れていたBGMは空気公団の「旅をしませんか」。その穏やかなメロディが朝の空気に溶け込み、時間がゆっくり流れていくのを感じる。


今回注文したのは、モーニングプレートと加賀棒茶ラテ。お値段は約2,000円。“ちょっと贅沢な朝時間”を過ごすことってなかなかないので、たまのプチ贅沢って良い感じ。

プレートの内容は、石川県の美味しいがギュギュギュッと詰まったバランスのとれた彩り豊か。ビーンズもほうれん草も、野菜の甘みがしっかりと感じられてうまい。そして何より加賀棒茶ラテの香ばしさとやさしい甘さが、金沢の朝にぴったり。
アイソトープさん、ご馳走様でした。
犀川沿いをまったり秋を感じて走る
犀川大橋の手前で川沿いの道に降り、スマホを取り出して一枚。平日の朝ということもあって、行き交う人の姿もまばら。川面を渡る風が少しひんやりしていて心地いい。

橋の下を潜り抜けると、キラキラと川面に跳ね返っていた。流れる水の音を聞きながら、ペダルを踏むリズムも心地よい。

ジョギングをする人たちとすれ違いながら、まったりと川上へと進んでいく。
ふと、秋の匂いが〜ゆっくり走るから気づけた金木犀
犀川から左に折れ浅野川へと向かう途中、ふと金木犀の香りが風に乗って届いた。思わずブレーキを握って立ち止まり、秋の匂いを胸いっぱいに吸い込む。この瞬間だけは、時間がゆっくり流れているような気がした。

さぁ、ここからは浅野川沿いにルートを変更して、湯涌温泉まで約10km。金沢の奥座敷を目指して、一気に走り抜けるぜ。
とある丘で、時間がとまる〜田園の風と抹茶ラテのひととき
湯涌温泉に行く前に、ずっと気になっていたカフェにちょっと寄り道。見えてきたのは「とある丘前」という看板。一瞬バス停かと思いきや、実はこれがカフェのサイン。おしゃれ〜。

「ハンモックカフェ とある丘」は、田園風景を眺めながらハンモックでまったり過ごせる癒しのカフェ。目の前には一面に広がる田んぼと、遠くの山並みがゆるやかに続いている。時間の流れが一気にスローになる。

1Fが食事スペース、2Fがカフェ。今回はカフェ利用ということで2Fに上がってハンモックに座る。アップダウンを繰り返しながら45分ほど走り続けてきたからか急に汗がいっぱい出てきた。スタッフの方が気を効かして、すかさず窓を開けてくれた。さらにうちわまで貸してくれた。「神対応…!」。ありがとうございます。

汗も引いてきた頃に、宇治抹茶ラテが出てきた。陶器のカップなのも、また嬉しいポイント。ほんのり甘い抹茶の香りが疲れた体に染みわたる。スプーンで底に沈んだ粒あんをすくいながら味わうと、ほどよい甘さが心地よいアクセントになった。

スタッフさんとまったり話しながら、気づけば時間がゆっくりと過ぎていく。「今日はここで終わってもいいかも」と思うほど、居心地が良い。でも、目的地の湯涌温泉はもう少し先。重い腰を上げて、再びペダルを踏み出す。
清流のほとりを越えて湯涌温泉へ
両側に広がる田んぼの中を、風を切って走り抜ける。なんとも気持ちいい。ただ、空を見上げると少しずつ雲行きが怪しくなってきた。ペダルを少し強めに踏んで、スピードを上げる。

途中、小さな橋の上で足を止めると、小川の水が驚くほど澄んでいた。覗き込むと、川底の石までくっきり見えるほど。欄干の脇に目をやると、小さな看板があり「この川では、初夏にホタルが乱舞します」と書かれていた。なるほど、だからこんなにも水がきれいなんだと納得。夏の夜の風景は、きっと幻想的なんだろうなぁ。


そしてついに、湯涌温泉の入り口が見えてきた。
江戸の暮らしをそっとのぞく 〜湯涌江戸村でひと休み〜
湯涌温泉の入り口近くにある「金沢湯涌江戸村」に到着。ここは江戸時代の金沢城下町や加賀藩地域の民家を移築・復元して公開している野外博物館。当時の建築様式や生活の工夫を間近で感じられる、まさに“時が止まったような空間”。

チョウバに上がって、そこに置かれたそろばんを手に取ると、玉が一列に六個並んでいて、今のものよりずいぶん多い。昔の商人たちはこの大きなそろばんで、どんな風に計算していたんだろうと想像してしまう。




「ぶんぶく茶釜」まであって、子どもたちが来たらきっとテンションが上がるだろうなと思う。「1人で来るには、ちょっともったいない場所だなぁ」と思いながら江戸の風景をまったりと味わった。
夢とロマンが漂う空間 〜金沢湯涌夢二館〜
湯涌温泉の奥に進むと、おしゃれな建物が見えてきた。ここは大正ロマンを代表する画家・詩人 竹久夢二 の作品と生涯を紹介する記念館。夢二が“永遠の恋人”彦乃と過ごした地でもあり、彼のやわらかな筆致と切ない恋の世界が今もそっと息づいている。

館内に入ると、静かな音楽が流れ、やわらかな光が作品を包む。夢二の描く女性たちは、どこか憂いを帯びた眼差しでこちらを見つめてくる。ポスターや装丁、雑誌のデザインにまで漂う大正の粋。その色づかいや線の細やかさに、思わず立ち止まってしまう。

展示室を歩いていると自分まで大正時代の“夢の中”に迷い込んだような感覚になる。
光と静寂が出会う場所 〜玉泉湖にて〜
湯涌温泉の通りを奥まで進み、急な坂を電動アシストで一気に駆け上がると、玉泉湖が姿を現す。湖面は静かに森を映しているせいか湖面も綺麗なグリーンだった。思わず一枚パシャリ。奥には、雪を貯える「氷室」がひっそりと佇む。

「金沢湯涌ホタルの里」とも呼ばれ、初夏にはゲンジボタルとヘイケボタル、2種類のホタルがこのあたりを舞うらしい。夜になれば、この湖畔が淡い光で包まれるのだろう。次は、夜の光が揺れるこの湖にもう一度来てみたいな。
湯けむり前のごちそうタイム 〜高尾食堂にて〜
総湯に入る前にお腹を満たしておきたい。「どこで食べようかな」と店を探す。「湯のかわ」さんも気になったけれど、今回は「高尾食堂」さんに決定。

メニューは定食系が中心で、どれも迷うほど魅力的。今回は日替わり定食を注文。肉か魚かを選べたので、迷わず“魚”をチョイス。

ほどなく運ばれてきたお盆の上には、サクサクに揚がった魚のフライと湯気の立つお味噌汁、そして小鉢が並ぶ。家ではなかなか味わえない“食堂のフライ”に思わず笑顔になる。お味噌汁には茗荷が入っていて、口の中がすっとさっぱり。体にちょうどいい優しさ。
高尾食堂さん「ごちそうさまでした〜」。
アニメの舞台と静けさが交わる場所 〜湯涌稲荷神社〜
総湯のすぐ横、石段を少し登っていくと、木々の間に赤い鳥居が見えてくる。ここは、アニメ『花咲くいろは』の舞台にもなった「湯涌稲荷神社」。作品のファンにとっては“聖地”として知られ、全国から訪れる人も多いそうだ。ファンでなくても、穏やかな空気と木の香りに包まれたこの場所は、湯涌温泉の静かな魅力を感じられるスポットでもある。

階段を登りきると、赤い鳥居が三つ並び、その向こうに小さな社がひっそりと佇んでいる。まるで森全体が神社を見守っているようだ。

手を合わせて、今日のポタリングで出会えたご縁や出来事に感謝を伝える。空を見上げると少し雲が厚くなり、雨の気配が漂ってきた。そろそろ温泉で体を温めて、金沢の街へ戻ろう。
白鷺の伝説に包まれて 〜湯涌温泉 総湯『白鷺の湯』〜
湯涌温泉の総湯『白鷺の湯』は、昔、傷ついた白鷺がこの湯で体を癒したという伝説から名づけられたと伝わる。その名の通り、弱アルカリ性のやわらかな湯は肌あたりが優しく、角質や皮脂を穏やかに落としてくれる“美肌の湯”。湯に浸かると、なめらかさと温もりがじんわりと肌を包み込む。

館内に入ると、まず目に入るのは券売機の横に掲げられた大きな案内板。「石けん・シャンプーは備え付けていません」の文字がしっかり書かれていて、初めて訪れる人にも親切だ。木のぬくもりが残る少しレトロな建物で、どこか懐かしい“まちの湯”の空気が漂っている。


お湯は透明で、派手さはないけれど、体の芯からじんわりと温まっていく心地よさがある。泉質は「ナトリウム―塩化物・硫酸塩温泉(低張性・弱アルカリ性・低温泉)」で、肌あたりがやわらかく、なめらかさと温もりが肌を包み込む。湯上がりには頬がぽかぽかして、冷えや末梢循環の悩みにも良いとされる、自分まで白鷺のように癒された気分になるな〜。
ジャズが流れる午後 〜カフェ レンテ〜
温泉で温まった体に、少しだけ涼しい風が心地いい。喉も乾いてきたし、金沢まで戻るにはまだ1時間ほど。空の雲行きも少し気になるけれど、もう一息、水分補給していこう。湯涌温泉街を抜ける途中、行きに見かけて気になっていた「カフェ レンテ」へ。

靴を脱いで店内に上がると、天井が高くて開放的。窓の外には青々とした木々が広がり、スピーカーからは心地よいジャズが静かに流れている。木の温もりと音楽が溶け合って、思わず「ここ、好きだなぁ」とつぶやいてしまう。

メニューを開くと、温玉ガパオライスやグラタンなど食事メニューも豊富。どれも美味しそうだったけれど、さっき高尾食堂でしっかり食べたばかり。少し我慢して、エッグサンドとアイスコーヒーを注文することに。するとマスターが「ホットサンドにもできますよ」と声をかけてくれた。迷わず「お願いします!」と即答。

しばらくして出てきたホットエッグサンド。焼きたてのパンの香ばしさと、ハムと卵の組み合わせがたまらない。アイスコーヒーのほろ苦さもぴったりで、湯上がりの体にしみる。窓の外には緑の森、耳には心地よいジャズ。「もう少しここにいたいなぁ」と思わせる、静かで贅沢な時間。金沢に戻る前のひととき、まるで時間がゆっくりと止まったようだった。
雨、降ってきたか〜。。。
ちょっと長居しすぎたかもしれない。外に出ると、空からパラパラと小さな雨粒。花の葉の上には、雨玉がころんと転がって光っていた。ワークマンのポンチョを取り出して、雨対策を整え、よし出発だ。

「とある丘」のスタッフの方に「帰りは浅野川ルートじゃなくて、店の前の道を登りきれば、金沢まではずっと下りですよ」と教えてくれた。それを思い出し、予定していたルートを変更。DE01の電動アシストを信じて、一気にペダルを踏み込む。

坂道を登りきり、下りに入って見えてきたのが辰巳ダム。犀川上流に位置するこのダムは、金沢市街の水を支える大切な存在らしい。

あとは下り坂を滑るように金沢の街まで約10km。雨も降ってるけど事故のないようにゆっくりと進もう。
雨の中を駆け抜けて、金沢へ
市街地に戻るころにはすっかり雨も上がっていた。本当はどこかのカフェで温かいコーヒーを飲みたかったけれど、雨具のパンツの防水が切れて少し濡れてしまったので断念。水筒に入れてきた熱いお茶があって良かった。やった〜金沢に到着だ!

湯涌温泉ポタリング、いかがでしたでしょうか。今回は、「今日はここで終わってもいいかも」と思えるほど、癒しのスポットが点在するおすすめのコースでした。
次回も、ゆるくて心地よい“ぶっち〜の温ポタ紀行”をお楽しみに。
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