夏の終わりを感じる間もなく秋が過ぎ去り、冬の気配が漂う今日この頃。寒さが苦手な“孤高のポタライダー”アーサーです。今回は、デイトナのスタッフKさんが北陸方面への出張に行くということで、車に同乗させてもらいながら北陸でポタリングを楽しんできました。
北陸といえば、日本酒の名品「天狗舞」や「菊姫」、さらには日本海の海の幸が豊富なエリア。11月末の今ならば、旬の蟹も味わえる!そんな期待を胸に、意気揚々と静岡を出発しました。
暗闇の高岡ポタリング
昼過ぎに静岡を出発し、富山県高岡市のサイクルショップ「アーバン バイクス ヴェロア」さんに到着したのは17時過ぎ。すっかり日が沈み、冬の夜の冷たい空気が肌にしみます。Kさんが打ち合わせをしている間に、高岡市内を少しポタリングしてみることにしました。
高岡の夜は想像以上に暗く、先ほどまでの雨で濡れた路面が滑りやすくなっています。気温は10度以下。防寒対策はしていたものの、体が固くなるほどの冷え込みです。
初めての土地で少し迷いながらも、なんとか目的地の金屋町にたどり着きました。
金屋町は、千本格子の伝統的な家並みが石畳の通りに連なる保存地区。観光客も少なく、街灯に照らされた静かな景観は幻想的でした。
この風情ある街並みを眺めながら、ひとときのポタリングを楽しみました。
手に入らない勝駒
高岡でのもう一つの目的は、幻の日本酒「勝駒」を手に入れること。10年以上前、富山の居酒屋で偶然飲んだ勝駒の美味しさが忘れられず、それ以来ずっと探していたお酒です。しかし、勝駒は地元の限られた酒屋でしか取り扱いがなく、さらに人気の高さからすぐに売り切れてしまうことも多いのです。
今回もいくつかの酒屋をリストアップして訪れましたが、どの店も既に閉店していました。時刻は18時過ぎ。高岡の夜の早さを痛感しながら、この日の勝駒探しは諦めることに。翌日は金沢でのポタリングが控えているため、日中に再チャレンジすることを決意しました。
金沢名物と充電トラブル
夜ご飯には、金沢の名物グルメである「金沢カレー」を味わいました。今回は「ゴーゴーカレー」の定番カツカレーを選択。濃厚でドロッとしたルーにサクサクのカツ、さらに甘めのソースが絶妙にマッチ。肉厚のカツが特に印象的でした。
しかし、その夜には思わぬトラブルが発覚。電動アシスト自転車のバッテリー充電用の鍵を自宅に忘れてしまっていたのです!ホテルのフロントに許可を得て、自転車を部屋まで運び入れて充電することで何とか解決しました。
お部屋で充電中。緑色のパワーランプが点灯しています。
早朝の東茶屋街をポタリング
遠征2日目は、金沢在住のアンバサダーであるぶっち~さんも加わり、3人で金沢市内をポタリングしました。朝はホテルでの朝食を済ませ、待ち合わせ時間まで少し余裕があったので、Kさんとまずは二人で金沢の街を探索。金沢駅前から浅野川方面へ走り東茶屋街に訪れてみました。
早朝ということもあり、観光客の姿はほとんどおらず、のんびりと写真撮影を楽しもうと思ったものの、集合時間が迫っていたため、慌ただしく金沢駅に戻ることになりました。
初めましてぶっち~さん!
金沢駅東口、鼓門の前でぶっち~さんと合流。
Kさんも私も、ぶっち~さんとは初対面でしたが、ポタリングや自転車談義が盛り上がりすぐに意気投合。
お互いのブログを読んでいたこともあり、不思議な親近感を抱きつつ、楽しい時間が始まりました。
事前にKさんがリストアップしていたスポットを、ぶっち~さんのナビゲートで巡ることに。
最初の目的地は尾崎神社でした。ここは4代目加賀藩主が幕府の許可を得て東照大権現を祀った神社で、葵の家紋が見られるのが特徴です。
続いて訪れたのは尾山神社。初代加賀藩主、前田利家公が祀られています。こちらでは前田家の家紋が確認できました。
尾山神社でひときわ目を引くのは、明治8年に建てられた神門です。この神門は和洋折衷の様式を取り入れたモダンなデザインで、金沢を象徴する建築物のひとつとされています。尾崎神社、尾山神社ともに、金沢城の敷地に隣接するように配置されており、藩政時代の歴史を感じさせる趣がありました。
武家屋敷から西茶屋街に抜ける
尾山神社を後にして、東へ少し走ると小さな用水路が見えてきました。この用水路沿いを進むと、風情を残した武家屋敷跡に到達。当時の城下町の面影が色濃く残るこのエリアを抜け、犀川を渡ると、西茶屋街に出ます。金沢には、東茶屋街と西茶屋街という2つの茶屋街があり、それぞれ城下町の東西に位置しています。浅野川を挟んで東茶屋街、西茶屋街の配置を見ると、計画的に区画された城下町の構造が伺えます。
インバウンドで人気、忍者寺こと妙立寺
次に向かったのは「忍者寺」として知られる妙立寺。金沢屈指の観光名所で、通常は予約が必須とのことですが、平日の午前中ということで飛び入り見学が可能でした。見学は15人ほどのグループで、ガイドの案内を受けながら寺内を巡ります。
妙立寺は、有事の際の出城の役割を果たしていたため、敵を迎撃したり、逃亡したりするための巧妙な仕掛けが多数存在。これが「忍者寺」と呼ばれる所以です。ガイドの方は「忍者とはいっさい関係ありません」と繰り返していましたが、むしろこの名前が観光のブランディングとして機能している様子。否定すればするほど「忍者寺」というイメージが強まる面白さを感じました。
寺町から辻家庭園、そして21世紀美術館へ
妙立寺を後にして寺町を抜け、辻家庭園に立ち寄りました。ここは加賀藩前田家の家老が金沢市街を一望するために作った庭園です。美しい日本庭園を期待して訪れましたが、この日はあいにく貸切のウェディングパーティーが行われており中を見学することは叶いませんでした。
再び犀川を渡り、金沢21世紀美術館まで戻りました。現代アートが楽しめるこの美術館も、金沢を代表する観光地の一つです。
がっつり金沢グルメ「ハントンライス」
お昼は老舗洋食店「さか井」で金沢名物のハントンライスをいただきました。
オムライスの上にエビフライや魚フライがのったボリューム満点の一皿です。前日のゴーゴーカレーに続いてがっつり系の食事となりましたが、懐かしい洋食屋の雰囲気の中で美味しくいただきました。
食事を終える頃には店内が外国人観光客で賑わっており、訪れる人々の情報収集力に感心しました。
勝駒との再会と北陸の味覚
ポタリングの合間に再び「勝駒」を求めて酒屋を訪問。しかし、残念ながら今回も在庫はなし。
ただ、地元の地酒「千代鶴」や「吉田蔵」を購入することで、ほろ苦い気持ちを少し癒やしました。
金沢のメタセコイヤ並木を目指す
午後は、Googleマップで見つけた「メタセ大通り」と呼ばれるメタセコイヤ並木を目指しました。浅野川沿いを上流に向かって進み、街道沿いの紅葉を楽しみながら住宅街の坂道を登ります。
目的地に到着すると、両側に植えられた大きなメタセコイヤが数百メートルにわたって続く見事な並木道が広がっていました。木々は紅葉の真っ只中で、黄金色の葉が青空と調和し、素晴らしい景色を堪能しました。
勝駒はどこだ!?
お忘れではないだろうか?この旅の目的の1つ「勝駒」を手に入れること。その目標を胸に、訪れたのは兼六大通りにある「ふじた酒店」さん。
お店では店員の方が親切に日本酒を説明してくれ、地元・北陸の地酒がずらりと並ぶ中、能登の震災の影響で他の酒蔵の設備を借りて仕込んだ「コラボ酒」という珍しいラインナップもありました。期間限定の味わいに心惹かれつつ、本命の「勝駒」を尋ねると――すでに完売。新酒の出荷は4月から10月ということで、今回はタイミングが合わなかったようです。
とはいえ、代わりに人気を2分すると言われる「千代鶴 純米吟醸」とこちらも美味しかった思い出のある「吉田蔵 純米酒」を購入。結局他の2人もそれぞれの地酒を手にし、次の目的地へ向かうのでした。
夕暮れの兼六園と雪吊り
金沢の中心部、兼六園にも立ち寄りました。夕暮れの時間帯にもかかわらず、園内は多くの観光客で賑わい、紅葉が見頃を迎えていました。
真っ赤に染まった木々とともに、雪吊りの施された松の木々が冬の訪れを告げています。日が傾く中で眺める紅葉の庭園は、この日の締めくくりにふさわしい風景でした。
和さびでの出会い、ついに「勝駒」登場!
ポタリングが終わり、ふじた酒店のおすすめで訪れた居酒屋「和さび」。
まずはお刺身の盛り合わせをいただきつつ、目の前に登場したのが――「勝駒 純米大吟醸」! ついに出会えたその一杯は、芳醇な香りとすっきりとした味わいが見事で、感動のひと時でした。
特に厚みのあるブリのお刺身は、Kさん曰く「ステーキのよう」と表現されるほど脂がのっており、濃厚な旨味が堪能できました。
その後も、能登の「大慶」と呼ばれる酒を香箱ガニと合わせたり、のどぐろの炙りの握りで締めたりと、日本海の新鮮な幸と地酒を心ゆくまで楽しむ夜となりました。
勝駒ポタリングを振り返って
初日の高岡では、夜間の雨上がりという条件の中、慎重な走行を余儀なくされましたが、暗闇の中で街灯に照らされる街並みがどこかノスタルジックで、独特の趣がありました。
そして2日目の金沢は、地元の人も驚くほどの季節外れの快晴。街中は紅葉が美しく、青空とのコントラストが印象的でした。
金沢は細い路地や自転車専用レーンが整備されていて、ポタリングにぴったりな街。
レンタサイクルも多く、観光客が気軽に楽しめる環境が整っています。
最後に、北陸の地酒と食事は本当に美味しい!勝駒を追い求めるもよし、他の地酒に出会うもよし。
美しい街並みをポタリングで巡りながら、北陸の魅力を堪能する旅、ぜひ皆様も体験してみてください。